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次回予告

来週の・・・・・ ウルトラマンファイア は

          超人間の伝言
                          
             お送りします


液体宇宙人 デラ星人 登場。

人間の集団失踪事件が発生。帰ってきた彼らは、
我々とはまったく異なる人間になっていた。
水中から現れるデラ星人の侵略を追え。

来週のウルトラマンファイアをご期待下さい。

提供は、鷹見作品工業株式会社でございました。

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#9 幻に咲く花 (Bパート)

←Aパート

13、植物園・実験室

                        
       暗い部屋。
       温室の窓越しに植物=アルケミラを見ている雨宮。
       アルケミラは生きているようにざわめいている。

雨宮  「アルケミラ・・・・・ここまで育ったのか・・・・・」

       雨宮の後を追ってきた梢、机の陰に隠れる。
雨宮  「私のことがわかるのか。そうか、知恵もつけたんだな。
     おまえは私の思っていた以上の速さで進化をしている。
     あの火事の炎を敏感に感じ取って、生き残ろうと・・・・・」
       隠れている梢の額から、汗がしたたる。

       この場を離れようとするが、ガタン、物音を立ててしまった。

       隠れている机の上から、ヌッ、とのぞく雨宮。


雨宮  「全て君がしたことなんだな。梢君」

       見つかった梢の髪からは、まるでシャワーを浴びたように
       大量の水が滴り落ちている。
雨宮  「アルケミラは体内で水を合成することで、水のない環境でも
     生きていける。だが・・・・・その細胞を70%が水分の
     人間の体に組み込めば、どうしても水分を放出せざるを得ない」

       立ち上がる梢、胸をはだける。
       緑色の、植物のような皮膚をしている。

梢   「先生のために・・・・・アルケミラを早く完全なものにしたくて・・・・・。
     あの日・・・・・アルケミラが自分で鳥を捕まえたんです。それからです。
     アルケミラが私にささやくようになったのは。
     進化を促すために、わざと炎の中に連れて行き、そして・・・・・
     私の体も与えました・・・・・」

       ガシャーン!

       ガラスを突き破り、アルケミラの蔦が雨宮を巻きつける。

梢   「地球の緑が悪魔に滅ぼされる前に、彼らを救わねばなりません。
     私は悪魔の体を捨て、地球の緑と一体になります」
雨宮  「梢・・・・・いや、アルケミラ・・・・・私はお前を、人を殺すために
      つくったのではないぞ・・・・・」
       梢の体が、みるみる怪獣化していく。
梢   「先生は、私の花が好きだった・・・・・。早く悪魔の体を捨てて・・・・・」
       ぎりぎりと、雨宮の首をしめる蔦。

       バターン!

       そのとき、ドアを蹴破って、ハラが部屋に飛び込んでくるやいなや、
       バシュ! すぐさまアルケミラの背中にショットを放つ。
       解放される雨宮。
ハラ  「大将! どんぴしゃ! あの植物は化け物だったんだ!」

       続いて、ヒダカ、リオ、イヌイも入ってくる。
ハラ  「ホラ、あの通り・・・・・ん・・・・・んん?」

       こちらを向いたアルケミラ、梢の姿になっている。
イヌイ 「ハラさん! まさかあの人を撃ったんスか!」
ハラ  「んにゃ、いや、俺は確かに・・・・・」

       梢、別の出入り口から外へ逃げる。
ハラ  「おい、待て!」
       後を追うハラとイヌイ。
ヒダカ 「この人を頼む。それと、本部に応援を頼め」
リオ  「は、はい!」
       雨宮をリオにまかせ、ヒダカも続く。

14、植物園近くの雑草地(夜)                    

       梢を追って走る3人。

       距離を置いて、梢が振り向く。
       ショットを梢に向けるヒダカ。

ハラ  「お、おい大将!」
イヌイ 「銃は人に向けちゃだめっスよ!」
梢   「ふふふ・・・・・私はもう人間などではないから大丈夫ですよ」
       ギョッ、とするハラ、イヌイ。
ヒダカ 「これまでの火災も、君がやったのか」
梢   「これからもっと、悪魔の巣を滅ぼさないと・・・・・地球を
     救わないと・・・・・」
       梢の体が再び怪獣アルケミラへと変化し、巨大化する。

9-3


イヌイ 「急激な細胞代謝による巨大化・・・・・。もう人間じゃない!」
梢   「そう、私は地球を救うのにふさわしい、進化した存在!」
       巨大化したアルケミラ、側に着陸していたソードBLUEを
       片足で掴み上げ、ヒダカ達に向けて落とす。

       3人には当たらなかったものの、中破するソード。

       羽を広げて宙に浮かび、飛び去るアルケミラ――。

15、工場地帯防衛線                         

       後退するキャタピラが、小さな野生の花を押しつぶす。
       工場地に侵入させまいと、アルケミラとLEAD方面分隊の
       戦車部隊が交戦している。

       アルケミラから吐かれる高酸素ガスで、火炎が一気に広がり、
       次々と戦車が爆発する。
       FASTもソードRED2機で猛攻をかけるが、
       火に強いアルケミラへのダメージはいま一つ。

       そこへ、一閃の光が飛んでくる。
       光の柱が地面から上がり、
ファイア「シュワッ!」
       ウルトラマンファイア登場。

アルケミラ「悪魔の味方をする者! 私こそが地球を守る!」

       かぎ爪で切りかかる。
       格闘の末、アルケミラの前蹴りがファイアを吹き飛ばす。
       倉庫を押しつぶすファイア。

       立ち上がって交戦も、両手両足の鋭いかぎ爪に苦戦。       
       タイマーが鳴り出し、Birst Limitに。

       足のかぎ爪で押さえつけられ、立ち上がれない。

       と、Burst Limitのファイアの放熱で、あたりがさらに燃え上がる。

アルケミラ「地球に・・・・・緑を・・・・・」
       ソードにイレイザーが換装、砲撃を受け吹き飛ぶアルケミラ。

       倒れたアルケミラ、怒りで土を掘りつかむ。
       その土の中に、小さな花を見つける。
       立ち上がり、周りを見回すと、戦いの影響で燃えている森や草原に気づく。

       ファイアの方をむくアルケミラ。

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       そっと首を振る。

       破壊活動をやめたアルケミラに、ファイアがタイマーから縮小光線を放つ。
       小さな種へと変わるアルケミラ。

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       タイマーが激しく点滅するファイア、その種をかかえ宇宙へと飛んでいく。

       朝日が昇ってくる。
       アルケミラの進撃した通り道には、新芽が芽吹いていた。

16、植物園                            

       雨宮に肩を貸し、植物園の外に出てきたリオ。
       ハラとイヌイが走ってくる。
リオ  「ハラ隊員! イヌイ隊員! あ、隊長は?」
イヌイ 「ヒダカさん、飛んでった怪物を追っかけてったよ。走ってさ。
     あの人のすることはホントわからない」
       コロロン、とシーバーが鳴る。
隊員  「本部から全隊員に報告、石黒工場地に出没した怪獣は
      マル5時37分、撃退完了。
      なお、怪獣の断片と思われる植物が残されている模様。
      発見しだい全て焼却せよ」

17、工場地帯防衛線                         

       アルケミラの残した芽も草もレーザーで焼却されていく。

18、植物園                             

リオ  「何も、そこまでしなくても・・・・・」
雨宮  「そうだ、まだ・・・・・研究室に残っている!」
       園内に走って入ってしまう雨宮。
リオ  「あっ! そんな体で!」

       追いかけるリオ達だったが、突然植物園が爆発する。
       炎に包まれる植物園。
       飛び込もうとするリオを止めるハラ。

ハラ  「待て! 手遅れだ!」
イヌイ 「あの植物の出した高濃度酸素に火がついたんだ。危険なんだ、
     人間にとってあの植物は・・・・・」

19、園内                              

       燃える園内、温室のアルケミラ植物も燃え上がる。
       炎の中、絵本をめくっている雨宮。

雨宮の声「あるとき、病室から女の子がいなくなりました。
      宇宙人は、女の子が帰ってきたときのために、きれいな花をベッドの上に。
      次の日も、ベッドの上に。次の日も、次の日も」

       崩れ落ちる園内。

雨宮の声「でも、女の子は帰ってきませんでした。悲しくて宇宙人は
       消えてしまいます。それから街には、花が降りだしました。
       ここにも、そこにも、街は花でいっぱいに・・・・・」
       燃えていく絵本。

20、宇宙                              

       宇宙に浮いた、小さな種から、小さな芽が出ていた――
                                         (F・O)

                       《 以下次回 》


<オマージュのみなさん>
高濃度酸素放出植物⇒ウルトラマンG「バイオス計画」・バイオスプラント
石黒工業団地⇒ウルトラセブン「緑の恐怖」・石黒隊員

<登場怪獣>
進化生命アルケミラ
雨宮という男が遺伝子操作した植物が、助手の梢と融合した生命体。
高酸素ガスを吐き、火災を誘発する。
梢の姿でいるときは余分な水分を自然に放出してしまう。
植物だけでなく鳥類や爬虫類の遺伝子も取り込んでいるため、
羽を広げて空も飛べる。

改造植物アルケミラ
遺伝子構造を操作された、元はテラフォーミング用の植物。
危機的な環境下で発芽し、繁殖をはじめる。


あまり防衛組織とからませない、怪奇中心の一本。
そして決して主役にはならないが、
いなけりゃいないで物寂しい植物怪獣のお話。
マタンゴ、ケロニア、ワイアールとトラウマ降臨率は随一の植物系。
そのぶん商品化率も低い悲しき存在。

劇中話の絵本は、前に別につくった「天井の宇宙人」という話の抜粋。

#9 幻に咲く花 (Aパート)

空想特撮シリーズ
ウルトラマンファイア


   幻に咲く花


登場人物

      ヒダカ・マコト
      ナナセ・リオ
      ハラ・カツヒコ
      イヌイ・ケイスケ

      アカツキ・マヤ
      イザキ・シュウジ
      ムカイ・イチロウ
      サワタリ・イサミ

      カミコウチ博士

      雨宮       (30歳/男)
      梢(こずえ)助手 (23歳/女)

      警備員
      通信隊員


      進化生命アルケミラ

      ウルトラマンファイア




     「ウルトラQ 空想特撮シリーズ」
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1、 絵本                             
   
声   「ある病院に、女の子がいました。
     女の子は重い病気で外に出られません。でもさびしくはありませんでした。
     天井の宇宙人と友達だったからです」
        ページめくり。
声   「宇宙人は女の子に、毎日花を一つ贈ります。
     さびしそうなときは二つ贈ります。
     病気で苦しそうなときは三つ贈ります。」
        ページめくり。
声   「だから女の子はさびしくありませんでした。
     いつの間にか、女の子の周りは花でいっぱいになりました」

2、 タイトル                           

      「ウルトラマンファイア」

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      「幻に咲く花」

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(F・I) クレジット・タイトル――        (F・O)
      「進化生命アルケミラ 登場」

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3、 雨宮植物園                          

        たくさんの草花に囲まれた室内。
        その中で一人の男がひっそりと絵本を書いている。
女性の声「先生、雨宮先生、花が、つぼみが開きました!」
        筆を落とす雨宮。
        振り向いて、
雨宮  「それは本当か・・・・・梢君・・・・・」

4、 植物園内実験室                        

        特殊ケースの中で、一輪の赤い花が咲いている。
梢   「酸素も、水もないところで、自分の力だけで頑張って咲いたんです。
     こんなにきれいな花を」
        驚きで何も言えず、花を見つめたままの雨宮。
梢   「この実験の成功で砂漠が、緑に変わります。
     地球は今よりずっと美しい星になるはずです。そして・・・・・」
        花。

5、 化学工場内(夜)                       

        夜の化学工場を、警備員が見回っている。
ラジオ 「さあ、ワンナウト満塁、1打逆転サヨナラのチャンスに、バッターボックスには・・・・・」
       度胸がないので、景気づけにイヤホンでラジオの野球中継を聴いている。
       シト、シト・・・・・と水が漏れる音。
       びくっ、として懐中電灯の光を向ける。
警備員 「なんだよ、水漏れか・・・・・。脅かしやがって」

       そう言って振り向いた途端、ポタン、と鼻先に落ちる水。
       あわてて天井を照らす。

       何もいない。

       ほっとして先へ進もうとした時、背後に現れる影。
       緑色の怪物が警備員に襲いかかる。(シルエット)
       ガシャン、と吹き飛ばされるラジオ。
ラジオ 「サヨナラです! サヨナラ、サヨナラ・・・・・」

6、 化学工場                            

       ドカァ!

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       爆発炎上、大火事を起こす工場。

7、 化学工場跡(昼)                        

       ザク、ザク、
       長い雑草をかき分けて、やっとこ現場にたどり着く特専。
       工場は火災で見る影もなくなっている。

ハラ  「こりゃひでえ、真っ黒こげだ」
イヌイ 「はくしょん、はーくしょん!」
ハラ  「何だ風邪か? 基地ん中に引きこもってばかりだから体が弱るんだ。
     自然の中で運動すりゃ俺みたいに365日健康体だぞ」
イヌイ 「馬鹿は何とやら・・・・・それにこれ、鼻がムズムズするだけで、
     花粉症か何か・・・・・はーくしゅ!」
       シーバーで情報を引き出しているリオ。
リオ  「消防の発表では不審火、化学薬品が何らかの拍子で引火したらしく、
     事件事故両面の可能性があるとのことです」

       ピッ、と電源を切ってメットにシーバーを戻しながら、
リオ  「ひどい出来事なのはわかりますが、これは火災です。
     今回は私達の出番はないように思えますが」
       ハラが振り向く。
ハラ  「ニュースでここの映像が出たら急に、出動する! なんて
     言い出してよお。なにが気になったんだか」
イヌイ 「でもヒダカさんの勘、怖いくらい当たるからなァ」

       一人高台から事故現場を眺めているヒダカ。
       工場は黒こげだが、周りに背の高い草々が生い茂っている。
       足元に、つぼみをつけた植物があった。

       そのつぼみをポキン、と折るヒダカ。

8、 植物園                             

       梢が植物に水をまいている。
       足元が水びたしである。
       ジャバ、ジャバ、と彼女に近づく足音。

       雨宮が現れる。
雨宮  「見てくれ。アルケミラが進化したよ」

9、実験室                             

       実験室にできた温室。
       扉を開けて中に入る。

       緑の植物が一面に生えている。
       雨宮が、蝶の入った虫かごを持ってくる。

       植物に向けて放たれる蝶。
       跳んでいると、植物の花からフウッ、とガスのような気体を吹きかけられる。
       動きが鈍り、植物の上に止まる蝶。

       瞬間、蝶は植物に取り込まれる。

雨宮  「自分で栄養を摂れるようになった。
      これは生命が活動範囲を広げるには欠かせない条件だ」
       花を優しくなでる雨宮。
雨宮  「アルケミラは地球に緑を取り戻してくれる」

       部屋を出た梢。
       扉を背にうつむいている。

       扉の隙間からその足元に蔦が伸びてくる・・・・・。
       気配に気づいた梢が振り向く。
       しかし何もなく、ただ水で湿っている床。

10、LEADブレーンズフロア                   

       ヒダカによって回収されたつぼみが装置で検査を受けている。

カミコウチ「加熱開始」
       その様子を見つめている特専。
       セ氏200度、300度と装置の目盛が上がっていく。

       500度で、花が開く。
       カミコウチ、ヒダカに向きなおる。

カミコウチ「すさまじい生命力だ。さっき行った実験の通り低酸素空間や冷凍空間、
      過酷な環境になるとこの植物は花を開く・・・・・まあ、繁殖を始めるのだ」
イヌイ 「へえ、やっぱりヒダカさんの目利きは確かだなあ。新種の植物、大発見っスね」
ハラ  「俺には全部同じ草ぼうぼうにしか見えなかったがな」
       感心する二人。
カミコウチ「いや、植物というには、新しい生物といえるぐらい遺伝子構造が進化している。
      自然界に存在しているとは思えんな」

       不安気のリオ。
リオ  「この花が、あの火事と何か関係している、隊長はそう考えているのですか?」
       じっとだまっていたヒダカ、
ヒダカ 「確か、あの辺に植物園があったな」

11、火災現場                          

N   「その夜、再び火災が発生した」
       猛々しくうなる消防車のサイレン。
       必死の消火活動。
N   「それからというもの、その地域で原因不明の火災が立て続けに起こった」

12、植物園(夜)                        

       絵本の挿絵の花を描いている雨宮。
梢   「また近くで火事があったらしいです。最近怖いですね。
     誰かが放火したのではないかという話も・・・・・」

       急に筆を置いて、部屋を飛び出す雨宮。
       雨宮にぶつかりそうになって梢は尻餅をつく。

       気にせず出て行ってしまう雨宮。
       その出入り口から、梢の足元まで、水滴の跡がある。


⇒Bパートへつづく