←Aパートへ19、海上 海上のBLUE、徐々にそのスピードを落とす。
リオ 「ブースター、切り離します。」
ソードの後方のジェット部分が分離し、さらに独
立した飛行形態に変形、飛び去っていく。
リオ 「アースソードBLUE、タートルフォームに移行」
BLUE、そのまま海中に突入する。
と、後部リパルサーリフトの力で、あっという間
に青い大陸棚から深海へと潜っていく。
20、深海 真っ暗な深海、BLUEのライトの光だけが静か
に進む。
ハラ 「こりゃあ目で見ていちゃ埒があかねエ。センサー最大、
まずは不明の潜水艇を発見するんだ」
ソードから強力な特殊電磁波が発射された。
21、BLUE内 窓から見えるのは岩盤と降り積もる塵のみ。
リオ 「外に出れば1秒でぺしゃんこの世界。そう考えると人
間は無力です」
ハラ 「んだが、科学の力でこうして深海も制圧してんのも人
間だぞ」
コツン、と壁を叩くと、
途端、機体がグラリと揺れる。
リオ 「う、動かない!」
イヌイ 「うわっ、壊したんスか? こんな海の底で・・・・・」
ハラ 「違う、外だ! 海中に何かが!」
ギロリ、窓から巨大な目玉がのぞく。
22、深海 ソードにしがみつく、原始怪獣アランガ。
ギシ、ギシ、・・・・・
執拗に頭をソード機にこすりつけ、その度に中の
隊員達が左右に振られる。
23、BLUE内 怪獣の回転泳法に翻弄される機内。
リオ 「怪獣!」
ハラ 「ほ、ほんとに出くわしちまったぞ!」
イヌイ 「あ、あれを!」
あっちこっちに振られたライトに、潜水艇「うら
しま」の残骸が照らし出される。
ハラ 「手遅れか! コイツの仕業だな」
リオ 「本部に応援を要請します!」
イヌイ 「そんなの間に合いっこないっスよ!」
リオ 「でも!」
ハラ 「何とかしねえと俺たちも海のもずくだぞ!」
リオ 「藻屑です!」
声も裏返っている。
ピー! 通信が入る。
声 「(無線/OFF)どうした? 忙しそうだな」
リオ 「だ、誰?」
その問いをさえぎるように、
イヌイ 「ヒダカさん! 今どこっスか!」
24、深海 貝を掴むラッコのように、がっちりとソードを捕
まえたアランガ、泳ぎながら暴れるせいで岩壁に
激突、岩肌が崩れる。
その岩の下敷きに、あの謎の隕石が埋もれていく。
25、BLUE内 ヒダカ 「(無線/OFF)今? 今ハワイあたり」
ハラ 「こっちは怪獣に捕まってるんだ! 急いでくれよ大将!」
リオ 「あ、あの、誰なんですか? この人!」
ハラ 「俺たち特専の隊長だ」
26、深海 ヒダカ 「(無線/OFF)とりあえず瞬光弾で攻撃、何とか気
を散らしてやれ」
リオ 「りょ、了解!」
至近距離で発射、命中する瞬光弾。
しかし泡の中のアランガ、ビクともしていない。
27、BLUE内 イヌイ 「恐ろしく皮膚の固い奴だ!」
ヒダカ 「(無線/OFF)それじゃあ攻撃は無意味だな。仕方
ない、飛び込め!」
リオ 「は? 飛び込めってどこに?」
ヒダカ 「(無線/OFF)固くない皮膚もあるだろ。口の中だよ」
リオ 「怪獣の口の中? そんな無茶な!」
しかし、ハラとイヌイ、すでに突入態勢。
ハラ 「しゃあない、大将がそういうなら、いっちょやってみ
るか」
リオ 「正気ですか!?」
ハラ 「仕方ないだろ、手が無いんだから。―――それに、大
将の勘はよく当たるんだ」
イヌイ 「エンジン全開!」
28、深海 勢いよく噴射されたエンジンの勢いで、拘束も振
り切り、アランガの口めがけて突入したソード。
口にクツワをはめられた格好になり、もんどりう
つアランガ。
錯乱し海上へものすごい勢いで泳いでいく。
29、BLUE内 衝撃に耐える一同。
ベキッ! ベキッ!
装甲のつぶれる音。
リオ 「ソードが壊れる!」
ハラ 「BLUEの装甲なら大丈夫だァァ!」
自分自身を励ますような叫び。
リオ 「でも、このままじゃ怪獣は・・・・・海上に!」
30、ヨコハマ沿岸 レジャー施設が立ち並ぶ観光スポットの沿岸。
いつもどおりの生活を営んでいる人々。
観覧車に乗っていたカップルが、海から向かって
くる白い航跡に気づく。
女 「ねえ、あれ、なあに?」
男 「ん・・・・・?」
2本足で立ち上がり、その巨体を現すアランガ!
男 「か、怪獣だっ!」
怪獣の突然の出現に逃げる人、もっと近くで見よ
うとする人、何もできない人で大混乱になる道路。
アランガ「ガアアア!」
アランガが咆えたことで、その口にはまっていた
ソード機が倉庫を下敷きに、落っこちる。
ズシ・・・・・ズシズシズシ、
突然アランガ、高層ビルに近づいていく。
その前面ガラスにアランガの姿が写りこむ。
そのまま頭から激突、崩壊するビル。
31、沿岸・レジャー施設内 ふらふらとソードから脱出したリオ達。
リオ 「あの怪獣、目が見えないんですよ!」
ハラ 「そりゃあ、暗い深海で視力は必要ねえばい」
イヌイ 「そうか音波だ。あいつ音波でエサや敵を感じるから、
音波の発信源の潜水艇や、自分たちを敵だと思って襲
ったんスよ!」
コオオオ!
アランガの口から放たれた放射能霧で、ビルがみ
るみる溶けていく。
リオ 「地上は音波にあふれてる。怪獣にとっては敵だらけ・・・・・
早く止めに行きましょう!」
しかし勢いもつかの間、ひざをつく。
リオ 「う、振り回されたせいで目まいが・・・・・」
リオのメットに通信、
ヒダカ 「(無線/OFF)大丈夫かい、ナナセ隊員」
振り向くと、水平線の彼方から、最大速度でシル
バーホークが飛んでくる。
超遠距離から怪獣にミサイルを放つホーク。
それが見事、次々アランガに命中。
進撃を止め、海のほうへ向きを変える。
32、シルバーホーク内 ヒダカ 「悪いな、南米基地で旧式を借りたもんだから遅くなっ
た」
ピー! 本部からの通信。
33、LEAD本部・統合本部 各隊員が緊急時の対応に追われている。
中央に座っている威厳ある男、LEAD極東支部
ホシノ総司令である。
ホシノ 「待てヒダカ君、一機では無謀だ。今からFASTが出
る」
ヒダカ 「(無線/OFF)しかし総司令、避難が殆ど進んでい
ないんです。間に合いませんよ」
34、特専ルーム あわただしく動く外とは対照的に、シャイン(猫)が
置いていかれた砂時計をいじっている。
ホシノ 「(OFF)わかった。いくら君でも無理をするな。避難
の時間かせぎで十分だ」
ヒダカ 「(OFF)了解!」
爪が引っかかり、机から落下する砂時計。
それがうまく一回転して見事に着地、砂が落ち始め
る。
35、沿岸 シルバーホークは神業並みの攻撃と回避を織り交ぜ
ながら、アランガを至近距離で誘導していく。
人の密集地から離れていくアランガ。
すかさずミサイル攻撃、エラに命中し、首をうなだ
れるアランガ。
沈黙する。
それを遠くから見守っていたリオ達。
リオ 「すごい! 1機であそこまでできるなんて!」
アランガの前で様子を見るホーク機。
36、ホーク機内 ヒダカの目がカッと見開く。
ヒダカ 「!?」
37、沿岸 突如アランガのヒレが大きく拡がり、先より強力な
放射能霧を地面に吐き出す。
そのまま首を持ち上げ、放射能霧がシルバーホーク
を直撃。
38、ホーク機内 ビビビビ・・・・・
警報が鳴り響く機内。
ヒダカ 「ふうん・・・・・ヒレを広げることで全身呼吸し、肺活量、
攻撃範囲が広がったのか」
39、沿岸 操縦不能のホーク機、アランガの横を滑空する。
リオ 「ああっ!」
ハラ 「大将!」
アランガの右腕、ホーク機をラリアット。
ホーク機、爆発四散。
声の出ないリオ。
アランガ「ギョオオオ!」
アランガ、勝ち誇って雄たけび。
刹那、空からパアッ、と広がる赤い光。
光の中心に、紅く輝く球体が現れた。
縦横無尽に飛び、球体はアランガの目の前に。
首をかしげたアランガ、放射能霧を吹きかける。
パアン!
爆発する球体。
シュワア!
赤い光がまぶしく閃き、人々がその衝撃で目を覆う。
アイガードを下ろしたリオ、くらんだ目に焦点が合っ
てくる。
その目が、光の中に巨人を見つける。
ウルトラマン・ファイア登場。
片膝をついていたファイア、その顔を上げる。
光る目。
40、統合本部 バッ、と立ち上がるホシノ、その手は震えている。
ホシノ 「ウルトラマン!」
砂時計が時を刻む。
41、沿岸 長い首をふりふり、猛然と突進するアランガ。
ファイア「ダハーッ!」
ファイア、それをかわし、首投げをお見舞いする。
激突、倒壊する建物。
しかし皮膚の硬いアランガ、ダメージ少なく、放射
能霧をファイアに吹きかける。
ファイア「ドオッ」
ひるんだファイアに鋭い牙で噛み付くアランガ。
抵抗するも、がっちり食いつき、離れない。
42、その遠方上空 FASTの乗ったブースターソード・REDが2機、
全速力で現場に迫っていた。
43、ソードRED・アカツキ機 アカツキ「怪獣と・・・・・赤い巨人を確認! 攻撃開始!」
照準が立ち上がる。
ピピピ・・・・・と警告音。
後部席のムカイ、データ処理をしている。
ムカイ 「待て! 撃つな!」
アカツキ「なぜ!」
44、沿岸 噛み付かれているファイアの動きが固まる。
すると、胸のカラータイマーが青から赤に変わる。
点滅、危険音。
タイマーから赤い光が全身に走る。
顔に赤いラインが現れ、その光は背中の突起を赤
く染めていく。
全身が赤く光るファイアの体、超高熱が放出され、
噛み付いていたアランガの口を焦がす。
アランガ「ギャワワワ!」
たまらず口を放すアランガ。
口は大火傷、煙を上げている。
戦いの趨勢を見つめていた人々の周りも、徐々に
温度が上昇し、さすがに残っていた人々も危険を
感じ、我先にと逃げ出す。
その上空を行くソード2機。
45、ソードRED・サワタリ機 コンピュータに映るファイアのサーモグラフィー。
ファイアの体内が激しく温度上昇していることを
示す。
サワタリ「この熱ではミサイルが怪獣に当たる前に自爆する。市
民がいる以上攻撃は許可できん」
アカツキ「(無線/OFF)何なんだあの巨人は!? 街を燃やすつ
もりか!?」
46、沿岸 赤い光を立ち上らせながら、立ち上がるファイア。
アランガが放射能霧を吐くも気にも留めない。
むんずとアランガを持ち上げ、岩石投げの態勢。
海に向かっておもいきり放り投げる。
かなりの遠投、高く上がる水しぶき。
海を臨むファイア。
その右手を懐に、そして抜刀の要領で胸の前に構
え、そこに左手をクロス。
海中からフラフラと起き上がるアランガ。
ファイア、両手をグッと突き出し、
十字に構え、
ファイア「シュワッ!」

ソルゼウム光線一閃!アランガ「ガア・・・・・」
アランガ爆発、その破片は光の粒子に変わり、蒸発。
47、沿岸近くのレジャー施設 その様子を見つめていたリオ達。
48、特専ルーム内 例の砂時計の砂が、全て落ち終わる。
49、沿岸 怪獣を倒したファイア、直立したまま動きが止ま
り、前のめりに倒れる。
地面に激突する直前、赤い粒子となって姿を消し
た。
50、沿岸 崩壊した建物群を、夕日が照らしている。
その夕日を見つめていたリオ、ハラ、イヌイ。
ハラ 「怪獣・・・・・。あの巨人がいなきゃ、どうなっていたこと
か」
イヌイ 「何者だったんスかね、あれは」
リオ 「私、知ってます」
意外な顔でリオを見る二人。
リオ 「あれはウルトラマン・・・・・」
そう言いかけた所に、後ろから声が。
ヒダカ 「彼は、ウルトラマン・ファイアだ」
3人の後ろにヒダカが突然現れる。
ハラ 「大将!」
イヌイ 「よっぽど死神に嫌われてるみたいっスね」
ヒダカ 「改めて、僕が特専の隊長、ヒダカ・マコトだ。よろし
く、ナナセ・リオ隊員」
リオ 「本当に、何ともないんですか? あの爆発で・・・・・」
イヌイ 「ヒダカさんはどんな状況からでも、不思議に必ず帰っ
てくるんスよ」
ハラ 「だから『不死鳥』ってんだ!」
ヒダカ、リオを見て、
ヒダカ 「はは、僕は不死身さ」
夕日のある方角へ歩いていくヒダカ。
ヒダカ、振り向く。
夕日を浴びたその顔。
ヒダカ 「そして、彼もね」
51、海 夕日が沈みゆく水平線で―― (F・O)
《 以下次回 》
⇒次回予告
ドロドンにご感想をお寄せ頂きありがとうございます。私が考えた部分(渋い体色と頬袋のコントラストや、溶解液の色)にまでお誉めの言葉を頂きましてありがとうございます。細やかで暖かい心遣い大変嬉しく思っています。鷹見さんはご自分で円○Pにシナリオ等を送られたことがあるのですね。実は私たち夫婦の家は、円○P(現在の本社)から環八をはさんで自転車で5分のところにあります。よく通るところなので私が発見しました。主人にも教えてあげたところ、こんな近くにあったのかと主人も喜んでいました。ちなみに主人は13年前に、円○Pの仕事でウルトラマンのプリクラのフレーム製作をしたことがあります。(私もイラスト等の仕事をしていた時期もあります)
鷹見さんは怪獣デザインやシナリオなど幅広く手掛けておられるようですが、どこで勉強されたのでしょうか。お若くて才能ある方なので将来怪獣界で活躍されるのではないかと注目しています。テレビでの鷹見さんの怪獣とみうらじゅんさんのストーリーを楽しみにしています。
Bパート読ませて頂きました。面白くて一気に読めました。すごく描写力もあって光景が目に浮かぶようでした。高層ビルにアランガの姿が映るところは私の好きなゴジラ84を思い出しました。隊長のヒダカが変身するところが斬新ですね。肝心な時になると隊長がいなくなる。面白いドラマができそうですね。アランガ、鷹見さんらしく生物感があってリアルでいいですね。上陸時はヒレを広げて皮膚呼吸というところが気に入りました。私だったら、首の部分に大きなヒレがあるので、両手のヒレの部分は指でもいいような気もします。
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