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第1話 帰ってきたグリッドマン! (Aパート)

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片桐 刀真(カタギリ トウマ)は不幸体質である。
今日も中学からの帰り路、朝からその身に降りかかった災難を数えていた。


      ◆   ◆   ◆


 人生楽あれば苦あり、そうやって両方の天秤が保たれればいいのだが、こうも悪い方ばかり
傾き続けると性格が曲がったり世の中をナナメに見てしまうのもまた必然だろう。
涙の後に悲鳴が出たり、後から来たのに追突されるのはもうゴメンだ。

 あの目覚ましにしろ、あの通行人にしろ、あの廃品回収トラックにしろ、一体俺に何の恨み
があるというのだ。 もしや恨みの処理手順マニュアルに「俺」が受け皿として登録されてい
るのではないか・・・・・・そんな欠陥マニュアルさっさと改定してもらいたい。恨みやら天罰やら
を受けるならもっと然るべき人物がいるだろう。
 例えばアイツ、名前は何だったっけ・・・・・・とにかく今朝のアイツの所に行ったらいいのさ。


      ◆   ◆   ◆


 とにかく焦っていた。
 まず、6時半に鳴るはずの目覚ましが突然ストを起こした。
 味もしない朝食を詰め込み道路に出ると、コンクリートの舗装をなでまわしている通行人に
出くわす。コンクリート・マニアなんて日本にそう多くはないだろうから、大方見等はつくが、
できれば先を急ぎたい、が・・・・・・

「どうかしましたか?」
「ちょ、ちょっと探し物を」

 都会じゃ他人から話かけられるのもティッシュ配りか怪しいアンケートぐらいだから、相手
方も少し動揺している。

「急いでたら、コンタクト、をね」
「それなら僕も・・・・・・」

 そうやって近づいた時に――靴裏に小さな感触を感じた。



 近道をしようと入った裏通りで、その9割を占有するトラックにより撤退を余儀なくされた
俺は、必死に学校へと続く交差路を目指していた。
 あと少し、あの角の先に、栄光の――

 柔らかい感触と共に、体が宙を舞う。
 誰が、こんなトラップを・・・・・・コンティニュー残り1機のアクションゲームがゴール目前で
電池切れを起こしたときのような絶望的な思いの脳みそに、さらにコントローラーが自爆した
ような悲劇が舞い降りる。

 目の前でノートやら文房具やらを振りまきながらふっとんでいるのは、
同じ中学の女子らしい。

 被害者でいるならまだガマンすれば済むが、加害者となれば話は別だ。
 相手への一時被害、風評による二次被害・・・・・・脳細胞を総動員して謝罪の句を考案しつつ、
背中から着地した。
 この場合、痛みを味わう暇は無い。 すぐに体勢を立て直して、口を開く。

「ご、ごめん、急いでて・・・・・・」

 こういう時、自分のボキャブラリーの無さにあきれ返る。

「・・・・・・ううん、私も、周りに注意してなかったから」

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 そう言ってそそくさと吹き飛んだノートを集めだした彼女、確かクラスで見たことがあるな。
ええと名前は・・・・・・どうもキャラが薄くて出てこない・・・・・・おっと、マズイマズイ。

「手伝います」
「いいです。私が悪いんですから」
「そんな、ぶつかったのは僕の方だし・・・・・・」
「イインデス!」

 俺の手からもぎ取ったノートをカバンにつめ、加えてさらに3つのカバンを抱えて、彼女は
走り去った。
「な、何もあんな言い方しなくたって!」
 と言いつつ、慰謝料を請求されるような状況がなくなったことに内心ホッとする。

「ナーニしてんの! ノロ子! アンタ私を待たせる気!」

 前方30メートル先から飛んでくる甲高い声。
 ええと、アイツは『城ヶ崎 美月』。 間違いない、自己紹介のときの目立つ系オーラが声
にまで乗っていやがる。 他にも2人、従えてるようだ。

「は、はい! いま行きます・・・・・・」

 ああ、カバン持ちか。 どうりで持ってるカバンが多いわけだ。
にしても前時代的だねえ・・・・・・。 『ノロ子』・・・・・・そんなやついたっけ・・・・・・の、の・・・・・・
そうだ、『野口 愛』だっ!

 その直後、足元に残された物体に気づいた。

「何だ? この黒いフロッピーディスク・・・・・・」
 
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      ◆   ◆   ◆


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「モンスタークライシス」。
 このオンライン・ゲームを攻略することが俺の日課になっている。

 簡単に言えば、自分で「怪獣」をプログラムして都市を破壊しつつ、ミッションをこなし、
さらに別のユーザーが作った怪獣を倒していくゲームだ。防衛軍のしかけたトラップを打ち破
り、最新鋭の戦闘機編隊を火ダルマにする・・・・・・日頃のストレス解消にもってこいだ。
 見ろ!巣に水を入れられたアリのように逃げ惑う非力なニンゲンの姿を!

 と、既に遥か宇宙から来た侵略者気分になっていると、カバンのフロッピーのことを思い出
した。
 どうも会話のきっかけがなくて、今日返しそびれてしまったのだ。

「今時フロッピーなんて、何に使うんだ?」

 こうなると人間制止は効かない。
 外付けのドライブを探し出し、愛用のパソコンに取り付け、起動させる。
 既に脳内では《仮想》ファイルが幾つか再生されているが。

「ぱ、パスワード?」

 『アクセスコードを入力してください』・・・・・・こう来たか。
 いくつか試してみるも、15打数0安打。

「ダメだこりゃ。無駄な時間を使っちまった」

 八つ当たりにキーボードを叩いたのだろうか。

「RE」

 液晶に浮かんだ文字に、無意識にエンターキーを叩いた。

「と、解けた?」

 実行されるファイル。
 が、起動が遅い。

 イラ…イライラ・・・・・・イライライラ・・・・・・
 そろそろこの「イラ」がドミノが出来そうなほど積み重なった時、
 遂に砂時計が消え去った。

「きた!」

 一瞬だった。
 画面が消えて真っ黒になった。
 頭は真っ白になった。

「ま、まさかウィルス・・・・・・そんな・・・・・・まだ・・・・・・ちょ、ちょっと待てよ、
 やっとあそこまで育てたんだぞ、ド、ドリルズ~!」



『Do You Continue?」


 確かそんなメッセージが出たと思う。
 錯乱した俺は、既にエンターを連打していた。


⇒Bパートにつづく

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